彼が生まれるずいぶん前から、妻は一生懸命、育児の準備をしていた。
ベビー服、ベッド、チャイルドシート。予定日の数か月前から、毎日のようにあれこれ調べては買い揃えていた。保育園のことまで気にし始めたときは、「まだ生まれてもいないのに」と思ったものだ。
一方の私はというと……正直なところ、「一か月前でも準備は間に合うんじゃないか」などと心の中で思っていた。もちろん、口には出さない。妻と一緒に、せっせと準備に付き合っていた。
父の言葉が、じわじわと効いてくる年齢になった
最近、父がよく口にしていた言葉を思い出す。
「お金で解決できることは、まあ何とかなる。実は一番簡単なんだ。解決できないことの方が多いもんだよ」
若い頃は、この言葉があまり好きではなかった。なんとなく、夢がないような気がして。
でも45歳になった今、じわじわと「なるほど」と思えるようになってきた。お金で解決できることは、確かに無数にある。そしてそれは、決して悪いことではない。
息子に最初に贈ったのは、印鑑だった
そんな考えもあってか、私が誕生前に真っ先に動いたのは、ベビー用品の準備ではなかった。
息子のための印鑑の発注。そして、彼が親の手を離れるまでの資産形成のための、銀行と証券会社の下調べだった。
生まれたばかりの息子に印鑑を持たせたとき、妻も義理の両親も目を丸くしていた。
でも、男親として、息子には生活力があって、金銭感覚の良い人間に育ってほしかった。小さな印鑑に、そんな願いを込めた。
とりあえず彼が高校生くらいになるまでは、私が一生懸命貯金を作ってあげようと思っている。
派手なことは何もできないかもしれないけれど、それがお父さんにできる、一番確かなことだから。



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