3年ほど前のこと。妻がよく一人でペットショップに足を運んでいた。
「今日もあの子、いたよ」と帰るたびに話してくれる。ガラス越しに気になっている子犬がいるらしい。
妻は「別に欲しいわけじゃないけどね」と言っていた。でも私は内心こう思っていた。「次は一緒に見に行って、あの子を買ってあげてもいいな」と。
ずっと売れ残っているくらいだ、またいるだろう。そう思って二人でペットショップへ向かった。
しかし、ケージのあった場所には小さな札が一枚。
「家族が決まりました」
もう売れてしまっていた。妻は「そっか」と気にしていない素振りを見せたが、どう見ても寂しそうだった。
その2ヶ月後、私たちはブリーダーさんのもとを訪ねた。
先に家族が決まったあの子と同じ犬種、イタリアングレーハウンド。茶色い子と黒い子がいた。
黒い子はとにかくやんちゃだった。タオルは噛むし、走り回るし、落ち着きがない。一方の茶色い子は穏やかで、おとなしく座っている。最後は2匹とも妻の足の上でお饅頭のように丸まって寝てしまった。

帰り道、「どっちにしようか」と話していると、妻はひと言。
「私はもう決めている。黒い子がいい」
迷いのかけらもなかった。
かくして、やんちゃな黒いイタリアングレーハウンドが我が家の新しい家族となった。名前はパシャ。今も変わらず陽気に、我が家を走り回っている。


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